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【体験記】135周年企画「帝国ホテル伝統のフルコース」でお誕生会!レーンヌエリザベスとシャリアピンステーキの味は?花束サプライズと記念日プレートの感想

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2025年11月3日で135周年を迎えた帝国ホテル。

その歴史を祝した特別なアニバーサリー企画「伝統のフルコース」プランが販売されました。

私自身、「最も帝国ホテルらしいフルコース」として、いつか必ず体験したいと願っていた憧れのメニューです。今回は母の誕生日に、ついに体験することになりました。

実は、一緒に祝うはずだった父に用事が入り欠席になるハプニングもあり…。

「まあいつものことよ」と笑う母ですが、寂しくならないよう、特別なサプライズも用意することにしました。

これまで本の中でしか知らなかった、エリザベス女王も召し上がった「レーンヌ・エリザベス」や、名声楽家の歯痛をいたわって生まれたという「シャリアピンステーキ」などなど。

語り継がれる伝説のメニューを「ついに体験できる」というワクワク感が止まりません!

135年の歳月が磨き上げた究極の味と、母とのお誕生会の模様を、ホテル研究家の視点で詳しくレポートします。

伝統のフルコース、どこで予約するのが正解か?

帝国ホテルの伝統メニューといえば、かつてはタワー館地下一階の「ラ ブラスリー」での提供でした。しかし、現在帝国ホテルは建て替えの真っ最中。タワー館の閉館に伴い、伝統メニューは現在、以下の5箇所での提供に変わりました。

  • パークサイドダイナー(本館1階)
  • ランデブーラウンジ(本館1階)
  • インペリアルラウンジ アクア(本館17階)
  • インペリアルバイキング サール(本館17階)
  • ルームサービス
OZモールで帝国ホテルレストランを確認

私はこれまで、ルームサービスを除くすべてのお店を利用してきました。

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本館1階の「パークサイドダイナー」はややカジュアル。同じく「ランデブーラウンジ」も歴史を感じられて良いのですが、特別な日にはやはり日比谷公園を眼下に望む圧倒的なビューが欠かせません。

また、本館17階の「インペリアルバイキングサール」はバイキングの活気あふれる楽しさがあり、日比谷公園ビューもありますが、

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今回は「母の誕生日」なので、大人でも静かに過ごせそうな「インペリアルラウンジ アクア」を選びました。

伝統のフルコース予約はいつから?

このコースは、「3日前までの完全予約制」です。

現在はWEB予約に対応していないため、各店舗へ直接、またはレストラン予約センターへの電話予約が必須となります。

〉〉〉帝国ホテルの伝統メニュー

予約変更ついでにサプライズを計画

ちょうど日比谷に用事があったため、予約変更のお願いは電話ではなく、直接「インペリアルラウンジ アクア」の店頭へ伺うことにしました。

まだ数週間の猶予があったこともあり、受付の方は快く変更に応じてくださり一安心。

そこで「せっかくのお誕生日なので、もう少し華やかにしたい」と、追加オプションを相談してみました。

帝国ホテルでは、こうしたハレの日のために「花束」や「ホールケーキ」のオプションが用意されています。

花束 小(およそ片手サイズ)3,300円
花束 中(およそ両手サイズ)5,500円
ショートケーキ (15cm丸型)7,500円
チョコレートケーキ (18cm丸型)10,500円
インペリアルラウンジアクアの追加オプション

今回のコースにはデザートが含まれているため、持ち帰りやすく、お部屋を彩ってくれる「花束」をお願いすることにしました。

「どんなイメージにしましょうか?」というスタッフさんの問いに、ついついオタク心が出てしまい「帝国ホテルらしい感じで!」とリクエストしてしまいました。

私の頭の中では「高級感があって、華やかで、インペリアルレッドが映えるイメージ」という意図だったのですが……

果たして、「帝国ホテルらしい」花束はどんな形となって現れるのか?当日までのお楽しみです。

いざ当日!インペリアルレッドが彩る12月の華やぎと、一輪の薔薇の品格

帝国ホテル本館メインロビーの象徴である「赤いバラのドーム状の装花(インペリアルレッド)」。背後には重厚な階段と輝くシャンデリアが見える、伝統と格式を感じさせる内観写真。
帝国ホテルを象徴する、メインロビーの装花。私がスタッフさんに伝えた「帝国ホテルらしい感じで」という言葉のイメージは、まさにこの気品あふれる『赤』にありました。

12月のロビーを彩る真紅のロビーローズ。その「赤」に見送られ、私たちは17階へと向かうエレベーターに乗り込みました。

帝国ホテルといえば、エレベーター内に活けられた一輪のバラ。

帝国ホテル本館エレベーター内の鏡面に飾られた、一輪のピンク色のバラ。背景には17階に到着したことを示すデジタル表示の「17」と、ホテル内のフロア案内が映り込んでいる。

鉄と鏡に囲まれた、本来は無機質になりがちなエレベーターという密閉空間。そこに生花が一輪あるだけで、空間の温度がふっと上がるような、不思議なやわらかさが加わります。

強い香りが漂うわけではありませんが、そこにただ佇むバラの姿は、帝国ホテルが守り続けてきた「凛とした誇り」を感じさせました。

歴史を感じさせる少しレトロなエレベーターの中で、この一輪のバラが醸し出すエレガントな温かみ。それは、これから始まる伝統のフルコースへの期待を、静かに高めてくれます。

<<<憧れの帝国ホテル、どんなプランがある?空室状況をのぞいてみる

特等席は日比谷公園ビュー。記念日を紡ぐ「伝統のフルコース」の幕開け

本日ご案内いただいたのは、日比谷公園を見渡す特等席。

インペリアルラウンジアクアは、やはり落ち着いた雰囲気で静かに語らうのにぴったりの空間です。やはり、「アクア」を選んで良かったです。

インペリアルラウンジ アクアの窓際席。大きな窓からは秋色に色づいた日比谷公園の木々と皇居の石垣、東京のビル群が一望できる。テーブルには二人分のカトラリーが整然とセットされている。

案内されたテーブルには、当初アフタヌーンティー用のカトラリーがセットされていました。

「インペリアルラウンジ アクア」は、夜景とカクテルを愉しむオーセンティックなバーなんですが、実は「アフタヌーンティーの聖地」としても名高く、この日も周囲は優雅なティータイムを過ごすお客様で満席でした。

姉妹サイトで、アフタヌーンティー記事も更新していますので、ご興味がある方はこちらもお読み下さい。

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それは一度下げられ、代わりにフルコース用の重厚なカトラリーが現れました。

帝国ホテルのロゴが入ったランチョンマットの上に、美しく磨き上げられた銀のカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン)が整然と並べられている。左上にはバターとパン皿が配置された、フルコース開始前のテーブルセッティング。
アフタヌーンティー用のセットが下げられ、現れたのはフルコース専用のカトラリー。アクアが「レストラン」へと切り替わります。

テーブルに並んだカトラリーは、外側から順番に使っていけば大丈夫。

本格的なメインダイニングである「レ・セゾン」に比べ、ラウンジである「インペリアルラウンジアクア」は景色も開けており、会話を楽しみながらリラックスして過ごせる雰囲気があります。

伝統のフルコースといえど、気負いすぎる必要はありません。

ただ一つ懸念点は、ラウンジであるアクアのテーブルは「ローテーブル」なことです。正直、本格的なフルコースをいただくには、少し姿勢が低くなり、使いづらさを感じる場面もあります。

「最高の景色とリラックス感」を取るか、「食事として楽な姿勢」を取るか。もしテーブルの高さを重視されるのであれば、サールなど他店を候補にするのも一つの手かもしれません。

インペリアルバイキング サールの座席。食事にちょうど良い高さのテーブルが配され、大きな窓からは日比谷公園の景色や東京のビル群を一望できます。
インペリアルバイキングサールの座席。
食事にはちょうどい高さです。

飲み物はコース料金とは別になりますが、私たちはノンアル派なんで無理をせずお水をお願いしました。

伝統のフルコースを実食!

「ニース風サラダ」:受け継がれる伝統と日本的アレンジの妙

前菜として運ばれてきたのは、かつて帝国ホテル タワー館の「ラ・ブラスリー」で愛されていた伝統のメニュー「ニース風サラダ」です。

運ばれてきた瞬間、母と「あら、素敵ね」と顔を見合わせました。

「ラ・ブラスリー」では陶器のお皿で親しみやすく提供されていましたが、ここでは透き通ったガラスの器に盛り付けられています。

ガラスの器に美しく盛り付けられた帝国ホテルのニース風サラダ。ゆで卵、インゲン、トマト、ツナなどが鮮やかに配置されている。
「ラ・ブラスリー」の伝統を引き継ぐニース風サラダ。ガラスの器に盛られることで、ラウンジらしい洗練された装いに。

ジャガイモ、インゲン、ゆで卵、ツナ、アンチョビ。一つひとつの素材がお手本のように丁寧に調理され、あっさりとしたビネグレットソースが全体を調和させています。

実を言うと、本場のニース風サラダは「生野菜」が基本。ジャガイモやインゲンを入れるのは、実は日本独自のアレンジ。 でも、帝国ホテルはあえてその「日本の洋食スタイル」を貫いています。

実際に食べてみると、ホクホクしたジャガイモにアンチョビの塩気が絡んで、なんとも言えない安心感があります。普通なんだけど実は超絶技巧という、帝国ホテルらしい個性を感じました。

ジャガイモ一つとっても。角が崩れず、それでいてホクホクとした完璧な火入れに、帝国ホテルの老舗のプライドを感じる料理。
ジャガイモ一つとっても。角が崩れず、それでいてホクホクとした完璧な火入れ。

母も「最初にこれだけ野菜が食べられると、この後の罪悪感がなくていいわね(笑)」と嬉しそう。健康を気遣う世代を連れて行くなら、このサラダは間違いなく正解です。

明治から続く伝統のパンもお代わりOK

パンは銀のカゴに美しく収められていました。

清潔な白い布にふんわりと包まれ、重厚な銀のカゴに入っている佇まいを見た母は「こういうところが、やっぱり帝国ホテルね!」と、その設えの美しさに目を細めていました。

帝国ホテル「アクア」のテーブルに置かれた、白い布でパンを包んだ銀のバスケット。背景には茶色のラウンジチェアが見える。

提供のパンは2種類です。

明治時代から変わらぬレシピで愛され続けている「バターロール」と、こだわりの「バゲット・トラディション」。

フォークとスプーンを鮮やかに操り、パンを一つずつ丁寧にお皿へ置いてくださる。その無駄のない優雅な所作が美しかったです。

これは、フランス料理の伝統的な「ゲリドン・サービス」の流れを汲むもので、たとえラウンジであっても、フレンチの伝統が深く根付く帝国ホテルだからこそできる、おもてなしの形なのだと感じました。

帝国ホテルのスタッフが白い手袋を着用し、フォークとスプーンを片手で操って(ゲリドン・サービス)、白い皿の上にバゲットを取り分けている様子。皿の上には丸いテーブルロールと「帝国ホテル特選発酵バター」が置かれている。
スタッフの優雅な所作によって、温かいパンが丁寧にお皿へ。この「ゲリドン・サービス」の技術に、帝国ホテルが誇るフレンチの伝統が息づいています。

明治時代から帝国ホテルで供され続けている伝統の「バターロール」は、まさに「日本人のための西洋パン」の完成形と言える一品でした。

手で半分に割った帝国ホテルの伝統的なバターロール。中の生地のふんわりとした質感が強調されている。
手で半分に割った帝国ホテルの伝統的なバターロール。

表面はツルりと香ばしく焼き上げられ、指先でちぎると、中からは驚くほどふんわり、もちっとした白い生地が顔を出します。

ひと口含めば、低温熟成ならではのほんのりとした優しい甘みが広がり、バターを塗らずともそのままで十分に完成された味わいを楽しむことができました。

この「そのままの美味しさ」こそが、130年以上の歴史の中で、数多くの賓客を虜にしてきた理由なのだと深く納得させられます。

フランス産小麦を贅沢に使い、一日かけてゆっくりと低温熟成発酵させた「バゲット・トラディション」。

断面に帝国ホテル特選発酵バターをたっぷり塗った、バゲット・トラディションのアップ。小麦の気泡とバターの光沢が鮮明。
バゲット・トラディションのアップ。

皮はバリッと香ばしく、中は驚くほどしっとり、もっちり。噛み締めるほどに広がる小麦の濃厚な甘みは、添えられた発酵バターと最高の相性を見せてくれます。

この絶品のパンはお代わりも可能です!

しかし、「パンでお腹いっぱいになるとメインが食べられなくなるわよ」と母にたしなめられ、ここはグッと堪えました。

琥珀色の芸術「ダブルコンソメスープ」

伝統の味「ダブルビーフコンソメ」は、牛肉と香味野菜をじっくり煮込んで取った「ブイヨン」をベースに、さらに再度、牛肉と野菜を加えて煮出すという、通常の2倍の材料と手間がかけられています。

運ばれてきた瞬間、その美しさに目を奪われます!
スプーンを差し入れると、スープが深い琥珀色で、宝石のように輝いていました。

帝国ホテル「インペリアルラウンジ アクア」のダブルビーフコンソメ。スプーンに掬われたスープが琥珀色に透き通り、背後には伝統のテーブルロールとバゲットが並んでいる。
この深い色合いと重厚な旨みこそが、帝国ホテル伝統の「ダブルビーフコンソメ」。スープに浮かぶガルニチュールの野菜の均等さは帝国ホテルの調理技術の高さを裏付けています。

徹底的に雑味を取り除く工程を経て、スプーンの底が透けて見えるほどの透明度と、光を反射するほどの輝きが生まれます。

帝国ホテルのダブルビーフコンソメ。スプーンに掬われたスープが琥珀色に輝き、高い透明度と濃厚な質感が強調されている。
帝国ホテル伝統の「ダブルビーフコンソメ」。スプーンに掬われたスープが透き通っています。

滋味あふれる旨みが体に沁みわたります。文句無しに美味しいです!

私はホテルショップ「ガルガンチュワ」でこのスープをテイクアウトし他ことがあります。食欲がない時や体が弱っている時、このスープを一口飲むと、元気が出るんですよ。

その超高級なコンソメスープを、今まさに本場の空間でいただく。これこそが、帝国ホテルでしか味わえない、唯一無二の贅沢な経験でした。

女王に捧げられた一皿「魚料理 レーヌ・エリザベス」

レーンヌ・エリザベス」は帝国ホテルの初代総料理長の村上信夫氏が1975年(昭和50年)に来日したエリザベス女王のために考案したメニューです。女王がこのお料理を気に入り、「レーンヌ・エリザベス」というご自身の名前を冠することをお許しになったというエピソードが有名です。

村上シェフは英国大使館に直接問い合わせをして女王のお好みを教えてもらい、「肉よりも魚の方がお好き」「ダイエットのため脂肪分の多いものは控えている」ということを知りました。

そこから、女王の好物がドーバー海峡の舌平目と海老ということも考慮して、「車海老を舌平目で焼きソースをかけて焼くお料理」を考案したそうです。

帝国ホテルのホテルマンにメニューの歴史が格調高く語られ、仕上げのソースが純白のお皿へと注がれました。

ホテルマンがソースポットから、舌平目と車海老のグラタン「レーヌ・エリザベス」にソースを注ぐサービスシーン。

そして、このメニューを味わうために用意された、背に丸みのない特殊な形状のスプーン。そこには、帝国ホテル創業の「1890年」の刻印が刻まれていました!

お料理一皿ごとに専用の道具が用意される徹底したこだわりは、かつての貴族の食卓を彷彿とさせ、歴史的な高級感を演出してくれます。

専用のグルメスプーンでソースを掬う様子。背が平らな独特の形状が特徴的。

専用スプーンはソースがとても掬いやすいかったです。

海老はすっときれなかったのでナイフをギコギコ入れました。

中はプリッとした力強い弾力の車海老と、繊細な舌平目、そして彩りを添えるほうれん草が丁寧に巻かれています。

中はプリッとした力強い弾力の車海老と、繊細な舌平目、そして彩りを添えるほうれん草が丁寧に巻かれています。
舌平目のグラタンの断面。中には大きな車海老とソテーされたほうれん草が詰まっており、海老のソースがたっぷりとかかっている。

「エビのビスクが大好き」という母に、「これはどう?」と感想を聞いてみました。

母はひと口、じっくりと味わったあと、「エビのビスクとはまた違ったベクトルの食べ物ね。これはこれで、本当に美味しい」と、深く頷いていました。

確かに、ビスクが海老の殻の香ばしさや濃厚さを前面に押し出すものだとしたら、このソース・モルネーを纏った一皿は、舌平目と車海老の身の甘みを最大限に引き出す、より穏やかで上品な仕上がりです。

一般的なフレンチのビスクのような重さはなく、気品ある個性が際立ちます。

これは、脂肪分を控える女王のために考案された「魚料理を、洋食の満足感で包み込む」という、村上シェフの緻密な計算の結果かもしれません。食べ応えはあるのに不思議と罪悪感のない、まさに「現代にも通じるヘルシーな贅沢」を体現しました。

シャリアピンステーキ

帝国ホテルのシャリアピンステーキ。格子状の焼き目がついた肉の上に炒めた玉ねぎが敷き詰められ、ブロッコリーと人参、舞茸が添えられている。
飴色の玉ねぎが肉を覆う、伝統のシャリアピンステーキ。
80年以上変わらぬ「もてなしの形」です。

「レーヌ・エリザベス」が女王のための華麗なる一皿なら、この「シャリアピンステーキ」は、お客様の「困りごと」から生まれた、帝国ホテルのホスピタリティの結晶とも言えるメニューです。

1936年、来日中だったロシアの世界的声楽家シャリアピン氏が、歯の具合が悪く「柔らかいステーキが食べたい」と要望し、当時の第4代料理長・筒井福夫氏が日本の「すき焼き」からヒントを得て考案しました。

のちにシャリアピン氏が再来日した際、当時支配人だった犬丸徹三氏が「この料理にあなたの名前を冠しても良いか」と直接交渉してOKをもらったという経緯があります。帝国ホテルの伝統の料理を語る上で外せない存在です。

肉を叩いて薄く伸ばし、たっぷりの玉ねぎに漬け込んでタンパク質を分解させることで、驚くほどの柔らかさを実現しました。

実を言うと、私は「ステーキ」と聞いて、いわゆる分厚い塊肉を想像していました。 ですが、運ばれてきたお肉は割と薄かった。

フォークで持ち上げられたシャリアピンステーキの断面。肉の上に玉ねぎが層になって乗っている様子。
この薄さと柔らかさが、声楽家シャリアピン氏の願いを叶えました。
すき焼きのような親しみやすい断面です。

すき焼きから着想を得たというだけあり、甘めの味付けと玉ねぎの旨みが、驚くほど心地よく喉を通っていくのです。

ただ高級な素材を出すのではなく、食べる人のニーズに合わせて、最高の知恵を絞って開発する。これこそが、本当の意味での「料理」なのだと感じました。

お肉は食べたい、でも分厚い肉を消化する自信がない……。そんな私もナイフでお肉をギコギコ切る満足感を得られました。

帝国ホテルのシャリアピンステーキの皿に添えられた「藤寅作」の刻印が入ったステーキナイフのアップ。
驚いたのは、添えられたナイフの切れ味。
日本の職人技が、歴史ある料理をさらに引き立てます。

気になる母の反応は、「同じ値段でもっと美味しいものは他にあるかもしれないけれど、これはここにしかない味ね。一度体験できてよかったわ」ですって。

あと、メインの存在感はもちろんですが、母がしきりに感心していたのが、添えられた舞茸や副菜の美しさでした。「見て見て、綺麗な舞茸〜」ですって。

母が「見て見て、綺麗な舞茸〜」とはしゃいでいた1枚。確かに、ひだの一つひとつまで美しく焼き上げられていて、脇役への一切の妥協のなさに帝国ホテルの凄みを感じます。
母絶賛の帝国ホテル美ししすぎる舞茸

確かに、まるで牡蠣のむき身のように美しい。

主役を引き立てるための脇役にまで徹底された帝国ホテルのプロの仕事ぶりに感心しましたが、母には「気になるのはそこかい」と思いました!!

デザート:チェリージュビリーとお誕生日サプライズ!

紅茶セレクト

紅茶はウヴァ、ダージリン、アールグレイ、アッサムの4種類から選べます。 チェリージュビリーの濃厚さを考えれば、コクのあるアッサムが正解な気がする……。

そう思いつつも、ホテルマンの方のおすすめは「ウヴァ」か「ダージリン」とのこと。

正直に言えば、「おすすめを聞いたからには、それを選ばないといけない……」という、変なプレッシャーを感じてしまいました。

結局、私はウヴァ、母はダージリンをセレクトしました。

そんな日本人特有の(?)変なプレッシャーを感じつつも、最終的に私はウヴァ、母はダージリンをセレクトしました。

母はいついかなる時も「やっぱりダージリンが最強!」というタイプなので、そこは一切ブレません。

一方の私は、現在ティーペアリングを学習中。「濃厚なデザートにはアッサムが定石だけれど、プロが勧めるウヴァならどう変化するだろう?」と興味もありました。

帝国ホテルのティーセット。白いティーポット二つと、紅茶が注がれた二つのティーカップが並んでいる。
左がダージリン、右がウヴァ。
アフタヌーンティーの聖地らしく、ティーポットでたっぷり提供されるのが嬉しい。

運ばれてきた紅茶は、さすがアフタヌーンティーの聖地”アクア”らしいティーポットでたっぷりと提供されます。

花束贈呈とバースデープレート

紅茶で一息ついた絶妙なタイミングで、帝国ホテルらしい凛々しく、礼儀正しいホテルマンがこちらへ歩み寄ってきました。

「お誕生日、おめでとうございます」 丁寧な言葉とともに、母へ差し出されたのは一束の華やかなブーケ。

驚きで目を丸くする母の姿は、動画にもバッチリ収めました。

帝国ホテルのレストランで提供された、お誕生日祝いの花束とデザートプレート。深紅のバラ4本と大輪のガーベラ、カスミソウをあしらった気品ある赤いブーケが、バースデープレートの横に添えられている。

バニラアイスに温かいチェリーソースがかかった伝統のデザート「チェリージュビリー」。手前には「お誕生日おめでとう」のチョコプレートが乗っており、奥にはお祝いの花束と白いティーポットが見える。
大きなバニラアイスの上に、ハッピーバースデープレートが載ってます。

冒頭でもお話しした通り「帝国ホテルらしいイメージで」という、かなりの無茶振りオーダーをしていたのですが、 深紅のバラ4本に、赤いガーベラ、可憐なカスミソウを組み合わせた気品あふれる赤い花束でまさに帝国ホテルらしいと感じました。

3,300円というお値段でこのクオリティで「誰か私にもこの花束くれないかな」なんて思ってしまうほどでした(笑)。

「これね、『帝国ホテルらしいイメージで』ってオーダーしたから、どうなるか心配だったんだよ」 そう打ち明けると、私の帝国ホテルマニアっぷりを知っている母は、「あなたらしいわね」と大笑い。

花束は帝国ホテルアーケードにある日比谷花壇のものでした。

日比谷花壇のロゴ(HIBIYA KADAN)が入った紺色のリボンで結ばれた、深紅の花束のラッピングのアップ。
HIBIYA KADANの紺色のリボンで結ばれた、深紅の花束のラッピングのアップ。

日比谷花壇は1944年帝国ホテルに初の直営店を出店しました。現在もホテルアーケードに「日比谷花壇 帝国ホテル店」がありますよね。

日比谷花壇はブライダルのブーケなどを日本で初めて紹介し、結婚披露宴での花束贈呈のシーンを発案するなど、ホテルを舞台に花の文化を広める役割を果たしたという歴史があります。

リボンに刻まれたロゴを見て、「やっぱ帝国ホテルの花束は日比谷花壇で決まりなんだな!」と思いました。

母には呆れられそうですが、ホテル研究家として、この『歴史の答え合わせ』に密かな興奮を隠せませんでした。

チェリージュビリーとバースデープレート

伝統のフルコースの最後を飾るのは、ビクトリア女王の即位50周年を記念して考案された「チェリージュビリー」です。

チェリージュビリーはインペリアルバイキングサールでもいただけますが、ジェラートに添えるスタイルです。

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今回の伝統のフルコースで大きなアイスに温かいチェリーソースが添えられます。

以前パークサイドダイナーでアイスをいただいたのですが、帝国ホテルのバニラアイスって格別の美味しいです。

今回はアイスの大きに、思わず「ウヒョー!」と心の中で歓喜してしまいました。

「エリザベス女王ゆかりのデザートなんだよ」と母に説明すると、母は上機嫌でダージリンとの相性を楽しんでいました。

私は紅茶の学習中の視点からウヴァをペアリング。

アイスの豊かな乳脂肪をウヴァの爽やかな渋みがすっと流してくれました。

確かに、キルシュ香るこのデザートにはアッサムよりも、ウヴァやダージリンが持つ「帝国ホテルらしい大人っぽさ」が不思議としっくりくると思いました。

お会計:インペリアルクラブ会員なら10%オフ

楽しい時間の後には、現実が待っています。

お会計です。お会計はテーブルチェックが出来ます。

本日のお会計は、お花代も含めて合計33,300円でした。

帝国ホテルの会計伝票。「伝統メニュー 30,000円」「FLOWER HIBIYA 3,300円」の明細が写っている。

私はインペリアルクラブ会員なので、会員特別価格でのお支払いとなります。

  • 通常料金: 1人 15,000円
  • 会員特別価格: 1人 13,500円(10%OFF)

今回のように、すでに会員向けの特別価格が設定されているコースの場合、他のご優待券との併用はできませんのでご注意くださいませ。

会員カードの内容については過去記事で詳しく書いています。ご参考にしてください。

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ガルガンチュワで伝統メニューを確認:次はピラフで決まり

楽しい時間を過ごしたあとは、一階のホテルショップ「ガルガンチュワ」へ向かいました。

ここで私は、あえて先ほどいただいた伝統メニューのテイクアウト価格を、母と一緒に再確認。

「ほら見て、コンソメスープ(1,944円)もシャリアピンステーキ(4,104円)も、テイクアウトでこのお値段なんだよ」

帝国ホテルのホテルショップ「ガルガンチュワ」の惣菜コーナー。コンソメスープやクリームコーンスープなどのカップが整然と並んでいるショーケースの様子。
伝統のダブルコンソメではないが、コンソメスープはありました。

私の言葉に、「ほんと、結構いい値段ね」と驚く母。ですが、次の瞬間には陳列棚を眺めて、 「あっ、ピラフ美味しそう」 と、もう新しい美味しそうなものに目が釘付けになっていました。

帝国ホテルのショップ「ガルガンチュワ」の惣菜コーナー。シャリアピンステーキ(4,104円)や海老のピラフがパック詰めされて並んでいる。
ガルガンチュワのショーケース。シャリアピンステーキや海老のピラフが並ぶ。

次に母へ手土産を持参する時は、あのピラフで決まり。そんな「次のお楽しみ」を見つけて、私たちの特別な一日は幕を閉じました。

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まとめ 帝国ホテルで伝統を味わって気付いたこと

レーンヌ・エリザベス」や「シャリアピンステーキ」など、伝統のお料理から、私はこんなことを感じました。

第一に、英国大使館との深い絆。帝国ホテルでは毎年英国フェアが実施されていますが、村上シェフが自ら大使館にリサーチをしたというエピソードから、英国大使館との長いお付き合いの歴史を改めて感じました。

第二に、賓客の名前を冠したお料理を、半世紀以上も色褪せない価値として守り続ける、ホテルの卓越したブランディングの力。

第三は、長く歴史に残るメニューを考案した第4代料理長・筒井氏、初代総料理長の村上氏の「料理人としての誉」です。こういうメニューが無形資産として残っている、そこに帝国ホテルの凄みを感じます。

歴史的な背景を知るマニアな私と、純粋に「目の前の味」を無邪気に楽しむ母の感性が交わりさらに理解が深まる、そんな特別な体験でした。

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インペリアルラウンジアクア 店舗情報

店名: インペリアルラウンジ アクア

住所: 〒100-8558 東京都千代田区内幸町1丁目1-1 帝国ホテル 東京 本館 17階

営業時間: 11:30~0:00(日曜日のみ22:00まで)

電話番号: 03-3539-8186

>>>帝国ホテル伝統のフルコース

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ホテルグルメウォッチャー
東京で働く会社員です。 趣味はホテルでの食事と、ホテル業界の動向をウォッチすること。
最近のホテル業界はまるで群雄割拠の戦国時代。次々と現れる新しいニュースから目が離せません。
このブログでは、単にお料理の美味しさを紹介するだけでなく、ホテルグルメの最前線を個人の視点で観察していきます。
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